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介護支援専門員の役割に関する研究―どこまでが業務範囲か?―報告書

報 告 書 要 旨

 本研究では、(1) 介護支援専門員が「他の職種や家族等との間で誰が担うかという点についての境界が不明瞭な領域、あるいは、他に担い手がおらず現状として介護支援専門員が担うことがあるものの、本来役割とは異なると思われる領域」の特定、(2) (1)で特定された業務領域について、介護支援専門員が実際にどれくらいの割合でその業務を行っているか、(3) 同領域について、純粋に法令上の記載のみから解釈した場合に、介護支援専門員はどこまでを業務範囲と認識しているか、という3点を明らかにすることを目的とした。(1)を明らかにするため、介護支援専門員等を対象としたフォーカスグループインタビューを実施し、(2)及び(3)を明らかにするため、居宅介護支援事業所の介護支援専門員を対象としたアンケート調査を実施した。

 結果、各種制度/サービスの利用支援、金融手続きの支援、保証/証明、直接ケアの提供等の計53領域があげられた。また、特定された領域のほぼ全てについて、「実際に行っている状況」と「実際の状況によらず純粋に法令上の記載のみから捉えた解釈」の間に、統計的に有意な差が存在することが確認された。例えば、各種申請書類の記入について、ほとんどの回答者が署名を含む代筆については介護支援専門員の役割ではないと認識していたものの、実際には1割前後の回答者が署名を含む代筆をやむを得ず行うことがあった。また、金銭や保証に関わる手続きでは、利用者の代わりに金融機関からお金を引き出すことや入院時の保証人となることを、5%程度の回答者がやむを得ず行っていた。失禁時のオムツ交換や緊急時の食事手配等の直接ケアについては、さらに高い割合で行われていることが確認された。

 本研究では、「介護支援専門員の役割ではないのは分かっているけれども実際には行わざるを得ない」という全体的な傾向が存在した。この結果に対しては、法的な後ろ盾のない業務についても介護支援専門員が危うい状態で行ってしまっていることに警鐘を鳴らす評価も可能であろうし、他に担い手がいないために介護支援専門員が「何でも屋」にならざるを得ない現実を捉え、支援の行き届かない「隙間」を顕在化する貴重な資料とする見方も可能であろう。本研究の結果は、介護支援専門員の役割の範囲について、そしてそれと表裏一体である他の職種の役割の範囲に対しても、重要な示唆を与えるものと考えられる。