指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の 一部を改正する省令(仮称)案に関する意見
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準等の
一部を改正する省令(仮称)案に関する意見
東京都介護支援専門員研究協議会
理事長 小島操
平成30年度介護報酬改定に関する審議報告の「居宅介護支援」について意見を述べる。
1、医療と介護の連携の強化について
医療との連携は、入退院時のみだけでなく平時から連携のもとにケアマネジメントの展開がなされていることは言うまでもない。平時においても「かかりつけ医」とケアマネジャーは密に連携を取っている。「入院時における医療機関との連携促進」に掲げている「利用者に対して入院時に担当ケアマネジャーの氏名等を入院先医療機関に提供するよう依頼する」ことを「義務」とするべきであるかは検討の余地がある。独居高齢者や、老々世帯の場合には情報提供の行為を行うこと自体、困難な場合が多い。
2、末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメント
①末期の悪性腫瘍の利用者に対するケアマネジメントにおけるプロセスの簡略化等は、速やかに支援を提供していくうえで、現場の実態に即した内容である。
②「著しい状態の変化を伴う」のは悪性腫瘍の利用者だけではなく、「頻回な利用者の状態変化」についても必ずしも悪性腫瘍の利用者に限らない。ケアマネジャーは病名に固定されることなく利用者の生活への支援を行っている。末期の悪性腫瘍に限らず、緊急に支援を要する病態についても同様の取り扱いを求めるものである。
3、質の高いケアマネジメントの推進
①人材育成を目的とした「主任ケアマネジャーである事を管理者の要件とする」ことの実施は、経過措置期間中に受講機会が平等に確保できることが第一に望まれる。都内の場合主任研修受講は保険者推薦であり、推薦要件は保険者それぞれで異なっているため、経過措置期間での受講が可能となるよう配慮が必要となる。経過措置期間で取得ができなかった場合、(特に一人居宅)事業所は閉鎖せざるを得ない状況となる。結果的に利用者に不利益が生じないようにする対応策もあわせて検討しておく必要がある。
②管理者が主任ケアマネジャーであることが人材育成に資することとなるかは検討の余地が大きい。管理者と主任の役割を別として人材育成に関するプログラムを考えることが現実的でもある。いずれにしてもケースを担当しながらの役割となるため業務負担が大きくなることは否めず、地域によっては人材不足も懸念される。
③特定事業所加算の「他法人が運営する居宅支援事業所への支援」はどのような地域でも実現可能な状況であるか検討を必要とする。すでに地域包括支援センター等では「ケアマネジャー支援」の事業として複数の研修や連絡会等が開催されており、参加に要する時間は業務への影響を大きくしている。特定事業所の主任ケアマネが他法人の介護支援専門員に対して人材育成を行う場合、法人間の力関係が生じないよう研修講師やファシリテーターなどの教育経験などを考慮することも必要であり、地域包括支援センター等の「ケアマネジャー支援」との整合性を図ることも課題となる。
4、公正中立なケアマネジメントの確保
ケアプラン作成時における複数事業所の紹介は、介護保険スタート時より職業倫理に基づき通常行ってきており今後も敢行していくものである。今後ケアマネジャーにとっては公正中立ができにくい職場環境改善への取り組みが課題となる。
5、訪問回数の多い利用者への対応
①訪問回数の多いケアプランについては、保険者がデータ管理の上からすでに把握できることであり、保険者が必要に応じて是正を促すことが妥当である。
②ケアマネジャーによる届出制とする場合は、緊急時等の際は業務の順序は拘束されていない老企22号3の(7)との整合性を整理し、ケアマネジャーが市町村にケアプランを届け出なければ利用者はサービスを受けられない期間が生じることや、サービスを受ける事が出来ないという権利侵害に及ぶことへの配慮が必要である。
③地域ケア会議の開催回数は年に1回~複数回とばらつきがあり、利用者の生活と会議開催が同時となるよう迅速に開催されることは想定しがたいのが実情である。生活援助を位置づけるケアプラン作成における届出が、ケアマネジメントプロセスを遂行する障壁となり、短期間であっても利用者の生活に不利益を及ぼさないよう配慮が必要である。ケアマネジメントに対する地域ケア会議等からの意見については、利用者が納得できる文書にての対応が望まれる。
6、障害者制度の相談支援専門員との密接な連携
現状、65歳を迎えた障害者手帳取得者が充分な説明を受けることなく介護保険制度に移行しており、密接な連携なくしてマネジメントは成りたたない。移行時の密接な連携のあり方は今後の課題でもある。
以上