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第7期介護保険制度改正への要望書の提出について

 当会は、第7期介護保険制度改正に向け、東京都内在住の要介護サービスの利用者及びその家族より声を集め、去る10月7日に厚生労働省、10月11日に財務省にそれぞれ要望書を提出致しました。本HPにて皆様にご報告し、提出した要望書を以下に掲載致します。 

   

                                  平成28年10月7日

 厚生労働大臣

   塩崎  恭久  様 

                            特定非営利法人 

                            東京都介護支援専門員研究協議会

                            理 事 長  千 葉  明 子

 

第7期介護保険制度改正に関する要望書

 

 現在、社会保障審議会介護保険部会において、第7期介護保険制度改正に向け「介護保険制度の持続可能性の確保」の観点から、「利用者負担の見直し」や「給付のあり方」等について検討を進めております。

 こうした検討事項は、利用者やその家族に多大な不安や負担を強いるばかりでなく、介護予防に基づく自立支援の実現といった介護保険制度の根幹をも揺るがしかねないものとなっています。

そこで、東京都介護支援専門員研究協議会(以下「当会」という)は、次期制度改正への利用者の意向や影響を把握するため、都内在住の介護サービス利用者にアンケート調査(詳細は別紙「第7期介護保険制度改正に関する利用者アンケート調査報告書」参照)を行いました。

その結果、「生活援助サービスが全額自己負担になった場合」に対して反対が77%あり、全額自己負担になった場合「生活が続けられなくなる」と答えた要介護1・2の利用者は41%にのぼりました。「利用料の原則2割負担」に対しては反対が70%で、「原則2割となった場合の対応」では「生活が続けられなくなる」と答えた利用者が34%でした。

この結果から、今回改正の方針である「経済再生と財政健全化及び制度の持続可能性の確保」といった趣旨は一定程度理解できるものの、多くの都内在住の利用者は制度改正に反対であるばかりでなく、このまま制度改正が実施された場合約4割以上の利用者が、生活が続けられなくなると訴えています。

こうしたことから、要介護者等の生活と権利を守ることを目的の一つとしている当会では、次期制度改正に向け以下の4つの点について要望します。 

 

1 認知症や身体状態の悪化の恐れがある 介護に手間を要する「要介護1・要介護2」の利用者の生活援助サービスを自己負担化しないよう要望します。

〇  「要介護1・要介護2」の生活援助サービスを自己負担化すると、サービスを控える利用者が出るばかりでなく、専門職によるサービスが提供されないことから、利用者の自立が損われ心身状態が悪化する恐れがあります。

〇 当会のアンケート調査によると、「生活援助サービスが全額自己負担になった場合の対応」に対する、「要介護1・2」の利用者の回答は、「全額自費でまかなう」はわずか7%だけで

あり「生活が続けられなくなる」が41%、「家族に依頼する」が18%、「自分で何とかする」が7%となっています。41%の「生活が続けられなくなる」利用者は、生活援助サ-ビスを負担することが困難で、家族などに介護を依頼することもできず、自分で何とかすることもできない利用者です。こうした利用者は、生活援助サービスが届かず、自立した生活が損なわれ身体状態が悪化する恐れがあります。

〇 更に、自由記載欄の利用者の声には、「物を云えない生活弱者のスキを突いた改正は絶対反対です。老人、一人者が生活援助、サービスを切られることは死に直結する。この対応を考えて欲しいです。」など同種の切実な意見が7件寄せられています。「支援を期待される家族(嫁や息子、娘)も高齢となり、たとえ、介護1や2の軽度であっても、ヘルパーの助け無しには、本人はもとより家族の生活も困難になると思います。在宅介護を奨励するならば、初期の軽度な者への支援程重要になるのはと思います。」同種の意見が5件寄せられています。「ヘルパーさんや、福祉用具の利用で軽度者の人々が自立した生活が送れています。大きな支えなのです。高齢になり、ある程度動けていても、重篤な病をかかえ、ぎりぎりの生活をしている人から、生活を圧迫するような利用料の負担アップはまさに弱い者いじめです。頑張って生活が出来るよう、必要なものが利用し続けられるよう再検討していただきたい。」同種の意見が8件寄せられています。その他、生活援助サービスが自己負担となることに関する不安や不満の声が多数寄せられています。

「制度の持続可能性確保の観点から、介護保険制度を中重度者に重点化する」ことは一定理解できるものの、「ヘルパーの助けなしには、本人はもとより家族の生活も困難になる」や「高齢になり、ある程度動けていても、重篤な病をかかえ、ぎりぎりの生活をしている人から、生活を圧迫するような利用料の負担アップはまさに弱い者いじめです。」など厳しい状況に置かれている「要介護1・要介護2」の利用者の実態を十分ご斟酌していただき、生活援助サービスを自己負担化しないよう要望します。

  

2 介護の手間を要し専門職による適切なサービス提供が必要な「要介護1・要介護2」の利用者のサービスを介護保険事業から切り離さないよう要望します。

〇 今回改正では、要介護1・要介護2を軽度者として、「介護保険を中重度に重点化する観点から、その他事業を地域支援事業に移行する」としています。しかし、要介護1の状態は、認知症等で見守りが必要であるか、短期間に状態が悪化する者(介護認定審査会委員テキスト2009「審査判定手順、状態の維持・改善可能性にかかる審査判定」)であり、要介護2は更に心身状態が悪化した利用者となっています。「要介護1・要介護2」の利用者は介護度が低くとも、認知症で見守りが必要であったり、状態悪化による医療等との連携を要するなど、介護に多くの手間を要する利用者です。こうした利用者のサービスを地域支援事業に移すことは、専門的な知識と技術を有したケアマネジャーのケアプランや、専門的な知識を有した介護、医療等のサービス提供を受けることが困難になることから、「要介護1・要介護2」の利用者の心身状態が悪化する恐れがあります。

〇 当会のアンケート調査によると、介護サービス利用者の64%が「要介護1・2(要介護1が30%、要介護2が34%)」で、こうした「要介護1・2」の利用者が同時に地域支援事業に移行しますと、サービス提供の受け皿不足の問題、認知症や心身の状態が衰えている高齢者への説明の不足による制度改正に対する理解の不足等、様々な課題の解決が求められます。

また、「要介護1・2」の64%が認知機能の低下が疑われる利用者(軽度46%、重度18%)で、57%が介護力の乏しい世帯(単身32%、夫婦のみ25%)となっています。こうした、利用者の心身の状態を維持改善するには、制度改正により「その他事業」が地域支援事業に移った後も、介護、看護、医療等の専門家によるサービスを継続的に提供することが望まれます。

〇  自由記載欄の利用者の声では、「要介護1・2の中には認知症で生活援助を受けなければ生活が成り立たない人がいる。市区町村の援助では、今現在の援助までは期待できない。独居生活は無理という事になる。認知症は別の対応をお願いしたい。」等同様の意見が3件寄せられています。「若い時は会社勤め、子供が自立してからは又お勤めと、主人と死別後はずっと働き、介護保険を納めて来ました。現在は年金生活で脳梗塞の為要介護1でデイケアに通所して居ります。今まで何の為に介護保険を納めてきたのか解りません。払うだけ支払って利用する様になったら値上げ又はカット、納得できません。」同様の意見が5件寄せられています。「介護認定で要支援や介護Ⅰ、Ⅱは保険からはずされる…など、とんでもない。何のための介護保険か。早く死ねといわれているようです。高齢者は年金しか収入がなく、減らされていく中で、できるだけ出費を少なくしたいと思っています。命をけずっても介護保険を利用できるまでは…と頑張っている高齢者の実態を、役所の皆さん知って下さい。」同様の意見が6件寄せられています。

 こうした状況をご理解の上、「要介護1・要介護2」の利用者を介護保険から切り離すことなく、現行どおり認知症や短期間で身体状態が悪化する恐れのある利用者に、専門職による適切なサービスが提供されるよう要望します。

 

3 仮に介護保険における利用者負担を2割にする場合でも低所得者など多くの利用料支払い困難者への対策を十分取るよう要望します。

〇 低所得の利用者は現状でもサービス利用を控えがちで、必要なサービスが入らず、介護度が重度化する傾向にあります。また、現行の制度で2割負担となったことにより、数千円の負担が払えず、必要なサービスの導入ができなかった例が見受けられます。

〇 当会のアンケート調査によると、2割負担となる可能性の高い「要介護3・4・5」で「2割負担になった場合の対応」を見ると、利用料を2割負担できる利用者は既に実施されている一定所得以上の利用者も含め23%でした。それに対し、38%はサービスの支払いが困難で、家族等の介護も受けられない利用者です。13%の「不足分は自分で」を選んだ利用者は、サービスが十分入らず、自立を損なう恐れがあります。

〇 自由記載欄の利用者の声では「収入が年金しかない。収入が同じなのに支出が増加しそうならサービス量を減らすしかない。生活の質が落ちる。資産のある人は良いけれど格差が更に大きくなるのではないか」同様の意見が7件寄せられています。「介護は長期にわたり、良くなる事がありません。自己負担が増えると、何かを削らなくてはならなくなります。本人は長生きしすぎたと言っていますが、生きている以上少しでも快適に過ごさせてあげたいと思いますが、蓄えがなくなるとそれもできなくなります。」同様の意見が7件寄せられています。「施行された場合、年金だけでは生活維持困難となり、遠方の子供が仕事をやめて、介護にあたるようになる。介護離職に継がるので、反対。」同様の意見が3件寄せられています。以上の外70件を超える意見が寄せられています。

 このように、利用者負担を2割にすることは、38%の「生活が続けられなくなる」方への対策、低所得で必要なサービスを控えざるを得ない利用者がいることなどなどから望ましくありませんが、「負担の公平性、介護保険制度の持続化の確保」といった観点から、やむを得ず2割負担を実施する場合でも、特に低所得者やその他多くの利用料支払い困難者への対策を十分取るよう要望します。

4 介護サービス利用の要として利用者の自立を支えてきたケアマネジメント・ケアプラン作成への利用者負担の設定は行わないよう要望します。

 〇 ケアマネジメント・ケアプラン作成に利用者負担が発生すると、費用負担への抵抗感などから介護サービス利用の相談を控える利用者が出るばかりでなく、ケアプラン作成料負担困難利用者の必要なサービスやサポートの継続ができなくなり、利用者の自立した生活が損なわれる恐れがあります。また、虐待予防の観点からもケアマネジャーの果たす役割は非常に大きいものです。

〇 当会のアンケート調査自由記載欄の利用者の声によると「ケアマネジャーの有料化は絶対反対。それでなくても利用の抑制になっているのに、ケアマネジャーは生活の砦で自分達の相談等にのってくれているのに、有料になり利用できなくなっても自分たちでなんてできない。介護保険を使うなと言っているのと一緒です。」同様の意見が6件寄せられています。「ケアマネジャーの有料化も止むを得ないかもしれないが負担額が高すぎる。せめて一律1,000円までだと思います。」同様の意見が5件寄せられています。「ケアマネジャーが有料になり、支払えない人は利用できないようになるならもう少しわかりやすいシステムにしない限り無理。本当に困っている人がどんどん苦しい状況になり身動きできなくなる。ケアマネジャー以外の人が出来る事なのだろうか。」。など多数の意見がありました。

〇 当会のアンケート調査によると、次期制度改正でケアマネジャーの利用に一部負担が導入される可能性が高い「要介護3・4・5」の状況は、「生活が続けられなくなる」が29%で、「有料なら利用しない」が17%で、合わせて46%の利用者が有料ならケアマネジャーによるケアプランの作成を受けないとしています。こうした利用者にはケアマネジャーによる専門的視点からのサポートができなくなり、自立した生活の継続が困難になる恐れがあります。また、

「有料でも利用する」が43%となっており、これを「要介護1・2」と比較すると、「要介護3・4・5」が43%であるのに対し「要介護1・2」は37%で、「要介護3・4・5」の方が6%も増加しています。こうした傾向は、自由記載欄でも紹介したように、介護度が進むに連れ、ケアマネジメント・ケアアプラン作成が利用者の生活に欠かせないものとなっており、自分たちでケアプランを作成することが困難な世帯が多いことを示しています。

このように、もはやケアマネジメント・ケアプラン作成は、介護サービス利用者の自立した日常生活に欠かせないものとなっており、生活が続けられない利用者や有料ならケアプランの作成を受けない利用者が46%もいることから、ケアプラン作成の利用料設定は行わないよう要望します。  

 

5 介護保険制度改正に関するその他意見

 当会のアンケート調査自由記載欄の声の中で、これまでの項目に入っていない、次期制度改正に関する貴重な意見を、いくつか紹介します。

①社会保障費にもっと税金を使ってください。介護保険料の負担も大きくなったにもかかわらず利用料まで重負担のかかる介護保険は誰のためにあるのか。財源の有無を論じる場合ではないと思う。出来れば現状維持を願っています。長引く場合、生活出来なくなる。    

②とにかく弱者にムチ打つ改正で、目的が実際に介護が必要な人達からどんどんかけ離れていくように思えてなりません。介護される人もしている人もどれだけ大変な思いをしているか生の声を聞いてほしい。

③介護保険制度が維持できる様、利用者各人が不必要な事は減らして、なるべくこの制度が続けていただけるよう願っております。

④社会保障費の増大は問題と思うが、資産・収入等を考え一律ではなくメリハリのきいた制度を考えてほしい。現在も介護の負担は大きいです。

⑤制度改正するのなら介護保険制度を利用している高齢者や家族に丁寧に説明し、納得できるよう、どこがどう変わるのかきちんと教えてほしい。財源についても明らかにしてほしい。

 

以上のような意見を始め、多数の貴重な意見が寄せられていました。今後の制度改正の参考にしてくだくため、その一部を掲載させていただきました。

                                      以上 

 

※要望書[概要版]、要望書、要望書の基となった調査報告書については、以下よりご覧頂けます。      

 

公開: 2016年10月19日  最終更新:2016年10月27日